心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
王子が不憫な状態になっているというのに、今ではこの部屋にいる誰もが暖かな目で不憫王子を優しく見守っていた。
「それに、マリアにはレオもいるからエドワード殿下がマリアの婚約者にならなくても大丈夫だよ」
「レオって誰だよ!!?」
大人から見ればバレバレなエドワード王子の恋心だが、マリアから見たらいつも不機嫌で怒っているだけの王子だ。
呼び方も『お前』で無知をバカにされる。
マリアは自分は王子に嫌われているのだと思っていた。
それなのになぜここまで自分との婚約について話してくるのか、マリアには理解できなかった。
もしかして、陛下に何か言われているのかな?
マリアのことが嫌いなら、無理に婚約しなくていいのに……。
そんな風にエドワード王子を気遣って言ったつもりだったが、王子はマリアの言葉に多大なショックを受けた。
(ああ……! まさかレオ様にも負けてしまうなんて! エドワード殿下、おかわいそうに!!)
エドワード王子の不憫さに、王宮の使用人だけでなくヴィリアー伯爵家の使用人達までもが心の中で優しく見守っていることを、王子は気づいていない。
マリアに芽生えたグレイへのほのかな気持ちに、ガイルとエミリーだけが気づいていた。
2人は複雑な気持ちでこの状況を見守っている。
(マリア様……)