心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 2週間前はなぜかマリアを傷つけてしまった。
 もし本当にそれで喜ぶのなら……。


「あーー……マリア」

「はい」

「グレイ様。まさかとは思いますが、同じセリフではいけませんよ。そこはきちんとご自分の言葉で」

「…………」

「……?」


 気恥ずかしそうな顔でガイルをジロッと睨みつけたが、心を決めたのかグレイは「ふぅ……」と軽く一息つくと、膝を折ってマリアの目線に合わせるようにその場にしゃがみ込んだ。

 顔が近くなったことで、マリアの頬が赤く染まる。

 グレイは碧い瞳でマリアをジッと見つめ、握っていた手に少しだけ力を込めた。


「マリア。俺は今まで女に対してこんなこと思ったことはないが、お前だけは可愛いと思ってる」

「……! かわいい……?」

「ああ」


 レオとガイルが微妙そうな顔をしている。
 腕を組んで渋い顔をしているレオと、目をつぶって少しだけ頭を傾げているガイル。

 グレイのセリフにどこか満足していない顔だ。
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