心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
しかし、マリアはとても嬉しそうな笑顔で黄金色の瞳をキラキラと輝かせる。
あまりの輝きに、瞬きをすればその光のカケラが落ちてくるのではないかと思うほどだ。
「ありがとう、お兄様。……えへへ」
「嬉しいのか?」
「うん」
グレイはホッとするとゆっくり立ち上がり、マリアの手を引いて歩き出した。
騎士達に囲まれた馬車まで一緒に歩いていく。
馬車のすぐ横には、イザベラを連行していった王宮騎士団の団長と呼ばれていた男が立っていた。
マリアの姿が見えるなり、頭を下げて礼をしている。
「聖女様、お迎えにあがりました。どうぞこちらへ」
「あ、ありがとうございます」
馬車に乗り込む直前、マリアは少し不安そうな顔でグレイ達をチラリと見た。
グレイは真顔のままコクンと頷き、レオは口をパクパクさせて『が・ん・ば・れ!」と応援し、ガイルは丁寧にお辞儀をした。
無言の挨拶だったが、マリアはそれだけでも安心したように微笑む。
「……行ってきます」