心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「今度からは色々と気をつけます! ……だから、もうどいてくれる? この姿勢でいるのちょっとツラくて……」

「は? …………!!」


 今自分がマリアを押し倒している状態だということに気づき、王子が慌てて身体を反らせて離れた。
 怒りまかせだったため、冷静になった王子は自分で自分の行動に驚いている。


「わっ……悪かった」

「ううん。ずっと右腕に体重をかけてたから、痺れちゃってるだけ」

「…………」


 不機嫌そうになることもなく笑って許してくれるマリアを見て、王子の顔に冷や汗が浮かぶ。


「おい。俺が言えたことじゃないけど、こんなことされたらもっと抵抗しろよ」

「抵抗?」

「こんな風に押し倒されたら、腹や顔を殴るなりしてすぐに逃げなきゃダメだ。抵抗しないどころか、焦りもせず笑ってるなんて……マリアは危機感がなさすぎる!」

「危機感!?」


 エドワード王子はマリアから少し離れて座り直すと、どこか心配するような顔でまっすぐにマリアを見つめてきた。
 真剣な話が始まるのだろうと察したマリアは、倒れ込んだ状態になっていた姿勢を正し、エドワード王子を見つめ返す。


「もし……もしも、他の男に……例えばカブール国の王太子に同じことをされたら、すぐに腹を殴……いや。それだと後々問題になって面倒な要求をされるかもしれないから、えっと……叫ぶ? そうだ。叫ぶんだ。大きな声で悲鳴をあげろ。わかったな?」

「んーー……でも、なかなか他国の王子様とこんな体勢になることはないんじゃないかな?」

「あの王太子だとあり得るんだ……手が早いことで有名だからな」

「手が早いって、押し倒すってことなの? そんなことをしてどうするんだろう?」

「…………」

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