心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
気づけば馬車は止まっていて、前に座るレオが不思議そうな顔でマリアを見ていた。
いつの間にそんなに時間が立っていたのかと思いながら立ち上がった時、走って馬車に近づいてくるエミリーが目に入った。
顔面蒼白で、かなり焦った様子だ。
「マリア様!」
「エミリー、どうしたの?」
馬車から降りるなり、マリアはエミリーに駆け寄った。
「大変なんです。グッ、グレイ様が……ひどい頭痛で倒れてしまって、マリア様の治癒薬が……もう在庫がなく、他のお薬は効かなくて……」
「ええっ!?」
ゼェハァと息切れしながら、状況を説明してくれる。
すぐにグレイ様のお部屋に……という言葉を聞く必要もなく、マリアは無意識に走り出していた。
お兄様!
レオや他の使用人達も数人マリアの後をついてきたが、グレイの部屋に入ったのはマリアだけだ。
苦しんでいる姿を見られたくないというグレイの要望で、部屋にはマリア以外は入れないように言われていたからである。
「お兄様……大丈夫ですか?」
ベッドにそろそろと近づくと、グレイは苦しそうに顔を歪めながら横になっていた。
息遣いが少し荒く、寝てはいないはずだけど返事がない。
意識が朦朧としているのではないかと心配になり、マリアはすぐにグレイに駆け寄った。
「……すぐに治すね」