心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリアは俺を変態だと思っているのか?」
「はあ!?」
執務室に呼び出されたレオが、呆れた声をあげる。
数日前に自分が言った言葉であるというのに、レオは何言ってんだ? という顔をしている。
その顔にイラッとしつつも、グレイは話を続けた。
「あの日以来、マリアが俺を避けている。思い当たるのはあのことしかない。お前が言ったように、マリアも俺を……」
「ちょ、ちょっと待って。俺が言った変態って言葉、そんなに気にしてたの?」
レオは申し訳ないような、どこかおもしろがっているような、口元の緩んだ変な顔をしている。
グレイはムッとしながらも、それを否定せずに会話を続ける。
「マリアの態度がおかしいから、そう思われてるのかと気になっただけだ」
「そ、そっか。なんかごめんな」
「? あの言葉は本音ではなかったのか?」
謝ってきたレオを見て、グレイはそう尋ねた。
あの言葉はただ勢いで言ってしまっただけであり、本音ではなかった。
それならば、自分は変態ではないということになる。
グレイはその結論に期待した。
自分で思ってる以上に、『変態』という言葉を気にしていたようだ。
「本音じゃなかったっていうか、あの時は俺もびっくりしちゃってさ。最低だ! 節操なし! って軽蔑して、つい思ってることをそのまま言っちゃったんだよ。ごめんね」
「…………」
つまりは本音ってことじゃねーか!
しかも最低や節操なしまで付け加えやがって……!