心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアは気づかれてなくてホッとしたような、少し残念なような、複雑な感情になった。
 それでも否定する気がさらさらないのは、マリア自身もグレイのことを鈍感だと心のどこかで思っているからかもしれない。



 そうだよね。気づいてたら、私にドレスを選べなんて言うはずないもん……。



 グレイのパートナーのことを思い出し、マリアの胸がチクッと痛む。
 聞かないほうがいいとはわかっていても、どうしても我慢できずにマリアはレオに尋ねた。


「ねぇ、レオ。お兄様のパートナーって、どんな方なの?」

「え……どんな方って、えっと可愛い……のかな? ピンクの髪に、自分に自信を持ってて…………って、あっ! でも、マリアのほうがもっと可愛いよ!?」

「いいよ。そんな気を使わなくて」

「いや、本当なんだけど……」


 エミリーから厳しい視線を向けられたレオが慌ててフォローしたが、マリアは気遣いから言われただけだとすぐに判断した。

 周りから可愛いや綺麗と言われることがあっても、マリア自身はよくわかっていないのである。
 それよりも、グレイのパートナー情報のほうが気になっていた。



 可愛い人なのかぁ……。
 お兄様は、可愛い人が好きなのかな?



 あきらかに沈んだ様子のマリアを見て、ずっと黙って2人の会話を聞いていただけのエミリーが口を開いた。
 テーブルの下で見えないようにしていたカタログを、スッと同時に出してくる。

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