心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
王子のパートナーということもあり、名を呼ばれみんなに注目されながらの入場。
第2王子の仮面を被ったエドワード王子が堂々と爽やかに歩く中、マリアはチラチラと会場を見回した。
お兄様、どこだろう……?
パッと目に入った黒髪。部分的にシルバーの色が混ざっているグレイの髪は、黒髪の中でも見つけやすい。
そして、そのグレイの腕にピッタリとくっついているピンク色の髪の令嬢──。
「!!」
その姿を見た瞬間、マリアは自分の胸に矢でも刺さったのかと思った。
そのくらいの衝撃と、胸の痛み。そして突然の息苦しさ。
こんなに明るく眩しいパーティー会場が、一瞬真っ暗になったような感覚もした。
腕……お兄様の腕にくっついてる。……やだ。やだやだ、どうしよう。
「マリア、どうした?」
「えっ」
エドワード王子の心配そうな声に反応すると、王子がギョッと目を見開いた。
「顔色が悪いぞ!? 気持ち悪いのか?」
「…………」
気持ちが悪いといえば、悪い。最悪な気持ちだ。
でも王子が聞いている気持ちの悪さとは、たぶん違う。
マリアはなんて答えていいのかわからず、黙ったままうつむいてしまった。