愛しているから、結婚はお断りします~エリート御曹司は薄幸令嬢への一途愛を諦めない~【試し読み】
 どうやったって入居にかかる費用を用意できそうにない。絶望の中に一筋の光が見えた。

 今のところ母のことを思えばお見合いをして結婚するべきだ。

 たとえそれが、私自身の生活を犠牲にするものだったとしても。

《あぁ、俺だって鬼じゃない。お前たち親子にとってはいいタイミングだろ? まさに渡りに船といったところだな》

 ラッキーだったな、とでも言いたげな叔父にムッとするけれど、今向こうの機嫌を損ねるわけにはいかない。

 株式を維持し音羽フーズを守り、母の施設の入居も叶えるには叔父の提案を受け入れるほかない。

 でも……心の奥底でくすぶっている初恋が、すぐに返事をするのを戸惑わせる。もう彼と結ばれることはないとわかっていても、それでも代わりの誰かと結婚したいとは思えない。

 でも……他に方法がある?

 自分に問いかけてすぐに答えがでた。

 私がお見合いをすれば問題が解決できる。これまで母が私を守ってくれたのだから今度は私が母を守らなければ。

「わかりました。お見合いします」

 思ったよりも小さな声になってしまった。まだ心のどこかで断りたい気持ちがあるからだ。自分でも往生際が悪いと思うけれど心はそう簡単に割りきることができない。

 しかし叔父は私の気持ちを考えることなどなく、どんどん話を進めていく。

《少しはマシな服でも着てせいぜい相手に気に入られるように努力しろ》

 叔父の言葉に私への気遣いはひとかけらも感じなかった。今に始まったことではないが、叔父の中で言うことを聞かない目障りな私を、厄介払いできてせいせいしているのかもしれない。

 悔しいけれど従うしかない。六年頑張ってきたが今なお自分の力ではなにもできないと思い知らされる。

「わかりました」

 母が安心して暮らすためには仕方がない。短い返事をして電話を切った。
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