愛しているから、結婚はお断りします~エリート御曹司は薄幸令嬢への一途愛を諦めない~【試し読み】
「それが向こうから頼み込まれたんだ。まぁ、音羽のすごさに気が付いたんだろうな」

 叔父の言葉にあきれてしまう。業績が悪化し、経営していたレストランは次々に閉店し、フランチャイズの解約も後を絶たないというのに……なんと呑気なのだろうか。

 けれど、それを口にはできない。私が叔父に代わって経営ができるわけではないのだ。父の作った会社が廃れていくのをじっと見ているしかない。

 とはいえ……音羽側にはメリットだらけの縁談だ。だから叔父はこんなに気分がよさそうにしている。

「相手の名前は赤城……なんだったかな。まぁ、後で自分で確認するんだな。向こうは面倒な仲人なんかは省いてやり取りしたいらしい。こちらにとっても都合がいい。面倒なことは少ないほうがいいからな」

 向こうから依頼された縁談話だ。叔父はもう成功したと思っているような態度だった。

 最上階でエレベーターが停まる。先に降りた叔父に続いて廊下を歩く。

 こんなことなら自分でしっかり相手を調べておくんだった。待ち合わせ場所であるレストランはもう目の前だ。今さら調べる時間もない。

 私の焦りなどなにも気にしていない叔父は、どんどん先を歩いていく。

「篤史さん、ちょっと待って」

「ぐずぐずするな。先方はもうすでにお待ちのようだ」

 確かに待たせるのはよくないのはわかるが、私の気持ちがついていかない。失敗が許されないと思うとどんどん緊張が高まっていく。

 スタッフの人に案内されて店内を歩く。せめて深呼吸だけでもしたいと思ったが、その前に叔父が個室の扉を開いてしまった。

「すみません。お待たせしました」

 これまで聞いたことのないようない叔父猫撫で声に驚きつつも、私は姿勢を正し後に続いて中に入った。

 叔父の背後に立つ私には、相手の顔が見えない。

「いえ。私も先ほど来たばかりですから」

 その声を聞いた私は固まってしまった。
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