愛しているから、結婚はお断りします~エリート御曹司は薄幸令嬢への一途愛を諦めない~【試し読み】
 嘘……そんなはずない。

 否定したものの、心の中では〝まさか〟が渦巻いている。

 きっと聞き間違いよ。緊張しすぎてそう聞こえるだけ。それにただ声が似ているだけの人かもしれない。

 ドキドキと心臓が大きく音を立てる。手に汗が滲みギュッと体の前で手を組んだ。

「おい、なにをぼさっとしてる。さっさとこっちへ来い」

 振り返った叔父が私の腕を掴み、無理やり横に立たせた。本来なら相手の顔を見るべきだが怖ろしくて顔を下に向け、自分のつま先をジッと見つめる。

「すみません、愛想がなくて。ほら柚花、顔を上げて挨拶をしなさい」

 叔父の声に私が反応する前に、相手が動いた。

「いえ。こちらが強く望んだ席ですので、私からご挨拶させてください」

 低く耳触りのよいよく通る声。否定したいのに、聞けば聞くほどあの人のように思えてくる。

 違う、絶対に違う。第一彼が赤城クリエイティブの御曹司なわけなどない。苗字が違うもの。

 そうであってほしいと、私は強く願う。

「赤城公士です。本日はよろしくお願いします。音羽柚花さん」

 反射的に顔を上げた先には、ずっと会いたくてでも絶対に会えない人の顔があった。


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