愛しているから、結婚はお断りします~エリート御曹司は薄幸令嬢への一途愛を諦めない~【試し読み】
 《これで何度目だ? 事情があるのはわかってるけど、他のアルバイトの子たちからの評判悪いよ》

 「はい……すみません」

 どうしようもない事態だが、他の人には関係のない話だ。いい感情を抱かれていないのも理解している。

 髪型や服装が自由で、比較的シフトの融通が利くので大学生やフリーターなど、若い人がアルバイト先には多い。店長も比較的若く歳が近いので和気あいあいとした雰囲気の職場だ。

 ……私以外は。

 それも仕方のないことだろう。昼の仕事とのダブルワークで、自分にかけるお金も時間もない。懇親会なども母が家で待っているからと断り続けていたら、誘われなくなった。

 おしゃれの話も流行りのお店も知らない。

 身長も百五十四センチで比較的低く、顔も童顔だ。髪も生まれてから二十七年、一度も染めておらずストレートの黒髪を肩の位置で切りそろえている。それが一番扱いやすい長さだからだ。

 始めたばかりの頃は、オーダーひとつ取るにも時間がかかり、みんなに迷惑をかけた。一生懸命取り組んできて、なんとか今までクビにならずに済んでいる。

 「今後、人手が足りない場合はすぐに出ますので」

 もう自分にできることは、このくらしかない。

 《これ以上言っても仕方ない。他のメンバーにもしっかり謝ってください》

 「わかりました。本当にすみませんで――」

 謝罪の途中で電話が切れた。相手の怒りが伝わってくるようだ。

 ため息と共にスマートフォンをバッグの中にしまった。

 私だって働きたかった。今日の分の給料がもらえないのはつらい。病気の母とふたりでなんとか支え合って生きている私にとっては、居酒屋のアルバイト代も大切な収入源だ。辞めてほしいと言われたら困る。

 いや、今はお母さんのことを考えないと。

 気持ちを切り替えた瞬間に、背後から看護師さんに声をかけられた。
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