君がいない
君がいつも使っていたクローゼット。
あたしと君の服は寄り添うようにして、そこにあった。
今はもう、あたしの服しかなくて……。
玄関にも、洗面所にも……。
どこにも君の物は存在していない。
【ナイルの庭】の残り香だけが、
君と過ごした日々をあたしに思い出させる。
「……あ……」
ふと目を奪われた、リビングの窓辺。
そこには、ガラス製のフォトスタンドに入れられた、あたしと君の写真が置いてあった。
……はずだったのに。
君がここを出て行く時に
持って行ったのかな。
何もない、がらんとした寂しい窓辺になっていたんだ。