運命の人
「私はモテるような人生を歩んでいないし、現実モテないので、一目惚れなんて言われても信じられなかったんです。だから揶揄われているか、騙されているんじゃないかって思って」
「それで『詐欺師』」
言われて頷くと、如月さんは困ったように微笑んだ。
「もう少し時間をかけて口説くべきだったんだな。まずはお互いを知るところから始めるべきだった。でも」
如月さんは体を起こしてから私を真っ直ぐに見て続けた。
「1秒でも早く樋口さんを恋人にしたかった」
「私がどんな人間かわからなくても?」
「そう」
驚いたことに如月さんは即答した。
「どんなに悪い人間だとしても抗えない程に惹かれているから。もっとも、樋口さんが悪い人間でないことは初めて会った日にわかっていたことだけどね」
「あの終点の時」
思い出すように口にすれば如月さんはニコリと微笑んだ。
「樋口さんはとても優しかった」
「如月さんは意味不明でしたね」
嫌味っぽく言うと、如月さんは声に出して笑った。
「ハハ。本当だよね。ごめんね。あの時は初めての感覚に戸惑っていたんだ。その後も色々と変な言動が多かったよね。詐欺師扱いされても無理はない」
それから如月さんはふぅ、と小さく息を吐き出して、また真剣な表情で私を見た。