運命の人
「ありがとうございます。でも本当に大丈夫なので。救急車は」
「それなら私、駅員さん呼んで来ますから。ここ、動かないでくださいね。それとこれ」
使っていないハンドタオルを手渡し、涙を拭うよう、目元を指した。
「すみません」
小さく頭を下げながら男性はハンドタオルを受け取り、目元を拭った。
それを見届け、足を改札方面に向ける。
「私、これから駅員さんを呼んで来ます…って、え?!」
駆け出そうとした時、急に腕が掴まれた。
「なんですか?!」
「すみません。本当の本当に大丈夫なので。駅員さんは呼ばないでください。それと」
「それと?」
合いの手を入れると男性はまた私の顔をジッと見つめてから続けた。
「どこかで会ったことがありませんか?って聞きたくて」
「えっと……」
目の前の男性は一度見たら忘れないようなイケメンだ。
「ない、と思いますが」
それなのに男性はあまり納得していなさそうで、眉間に皺を寄せ、首を捻っている。
納得していないというより困惑しているように見えた。
「なにか」
あったのかと聞こうと思ったら、別のホームに電車が着いたのが見えた。
「あっ!あぁー…乗り遅れた…」
次がたしか終電だったはず。
それに間に合わなければ高いお金を支払ってタクシーで帰るしかなくなってしまう。
将来のために出来る限り貯蓄をしたいから、できればタクシーは避けたい。
「あのー」
ベンチに腰掛ける男性に声を掛ける。