私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました

1 婚約破棄をされる……?


「アリエル……あのね、フェリクスがあなたとの婚約を破棄したいって言ってるの」

「……え?」


 目の前に立つ幼馴染のドロテは、私から視線を外したまま申し訳なさそうに言った。
 波打つピンク色の髪で顔を隠すように、顎を引いて恐縮している様子だ。
 


 婚約破棄? フェリクスと私が?
 ……そう。とうとうその時がきたのね。



 驚いているものの、どこかすぐに受け入れている自分がいる。なぜなら、いつかはこんな日がくるとわかっていたのだから。



 今日私を王宮に呼び出したのは、それを言うためってわけね。
 わざわざドロテまで呼んで先にそれを伝えさせるなんて、本当に性格が悪い王子だわ。
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