私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました

 詳しい説明も何もできないまま、意識のないフェリクスは運ばれていってしまった。

 半泣き状態のドロテもそれについて行ったが、私だけ(正確には半透明のフェリクスも)この場にポツンと残されている。


「なんなんだ……この状態は。俺は一体どうしてしまったんだ? これは幽霊というやつなのか?」

「生きているんだから、幽霊ではないわ」

「じゃあなんなんだ!?」

「もしかして、生き霊……というやつではないかしら?」

「生き霊!?」


 頭の片隅に浮かんでいた言葉を伝えてみると、フェリクスはギョッとした顔で私を見下ろした。
 意識のないフェリクスは心配だけど、目の前でこう元気に話されているとどうにも真剣に考えていられない。
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