私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました

 少し離れたところに見えたその姿。
 大勢の使用人を引き連れて、どう見ても今ベッドから起き上がってきましたと言わんばかりの格好のフェリクスが私を見て叫んだ。


「早く! アリエルをあそこから出せ!!」

「わかりましたから殿下! お願いですからまだ安静にしていてください! お部屋に戻って……」

「いいからアリエルを早く出せ!」

「はっ、はいぃぃ」


 フェリクスの心配をして真っ青になっている執事は、半泣き状態で返事をしている。
 ついさっきまで意識不明だったのだから、その心配も理解できる。



 まさかフェリクス自身が助けに来てくれるなんて思ってなかったわ……。



 起きてすぐに私への嫌疑の誤解を解いてくれたらしく、私は無事牢屋から解放された。
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