私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました【コミカライズ決定】
いや。いやいやいや。
何を言う気なの、私!? 甘えるって、どうすればいいのかわからないわ!
「やっぱりなんでもないわ」
結局何も言えなかった私を見て、フェリクスは突然「ふはっ」と笑い出した。
「!? な、何よ?」
「いや。昔から俺、アリエルのその照れて何も言えないところが好きなんだよな」
「はあ!?」
「昔から、俺に対してお礼を言ったり謝ったりしようとした時に……そうやって照れて顔を赤くして、少し怖い顔になるの気づいてない? その素直じゃないくせにわかりやすいところ、可愛い」
「…………っ!」
かあああーーっと真っ赤になったであろう私を見て、フェリクスがさらに嬉しそうに笑った。
昔から何も進展していないようで、少しは進展したような微妙な関係。
でもそれが私達らしくて合っているのかもしれない。
これからは、少しでも素直になれるようになりたい。
そう思いながらも、当分はまだ無理そうだと心の中でため息をついた。


