【コンテストエントリー作品】はんなり舞子はミステリアスな極S(ごくエス)京男

第3話 隠し事とデート

<シナリオ表記>
M=モノローグを意味します。
N=主人公視点によるナレーションを意味します。
×××=短い時間経過を意味します。

○四条大橋・袂
降り注ぐ太陽の日差し。
私服姿の知恵利。元気いっぱいテンション高め。
知恵利(N)「今日は仕込みが始まって、初めてお暇をいただきました! 先輩舞妓(本当は男の子)の奈々緒さんがわたしを(色気のある女性に?)プロデュースしてくださるということで、本日は二人で繁華街へ来ています! そして、こちらプロデューサーの奈々緒さん!」
奈々緒「あっつ~。日焼けせんようにせなあかんなぁ~。」
日傘を差し、キャスケットを被って、パーカーにジーンズというラフな出で立ちの美少年、
ーー普段着姿の奈々緒ーーが立っている。
ラフな出で立ちながらも、姿勢の良さ、スタイルの良さが際立っている。
髪は帽子の中に隠されている。
道行く老若男女がときおり振り返る。
群衆1「ドラマかなんかの撮影かしら?」
群衆2「え、あの男の子、超かっこよくない? となりの人はスタッフ・・・? かなぁ?」
一方、いかにも垢抜けない身なりの知恵利。
奈々緒、知恵利の服装まじまじみって。
奈々緒「うーん。やっぱり、いまいちやねんなぁ~~~~」
知恵利「くぅ~ん・・・」
涙目の知恵利。
奈々緒「泣くな泣くな。僕がなんとかしたるから! ほら、ついて来い、ポチ!」
知恵利「あ、待って。奈々緒さん!」
知恵利の手を引いて、駆け出す奈々緒。
握られた手をぎゅっとつかむ知恵利。
知恵利(M)「奈々緒さん、なんだか今日は元気。それにーーー」
着物を着ていない分、いつもより動きが大きく、男らしい振る舞いの奈々緒。
骨張った手や腰回りが目立つ。
知恵利(M)「オフ日の奈々緒さん、めちゃくちゃ、やばい!!!」
ニカッと爽やかに微笑む奈々緒。
知恵利(M)「いつもは艶やかな舞妓さん。だけど今日は太陽にも負けないくらいまぶしいアイドルみたい・・・ギャップ萌え・・・!!!」
奈々緒の笑顔の眩しさに、目を細める知恵利。
しかし、パーカーの襟元からチラリとのぞく痣が気になる。
知恵利(M)「痣のこと、気になる。けどデリケートな問題だろうし。
前に、どうして舞妓をやっているかも聞いたら機嫌損ねちゃったし。奈々緒さんが自分から話してくれるまで、何も言わないほうがいいよね・・・」

○四条河原町
祇園祭の山鉾(やまほこ)があちらこちらに立てられている。
街を歩いている奈々緒と知恵利。
知恵利「あれは、なんですか・・・?」
山鉾を指さして尋ねる知恵利。
奈々緒「祇園祭の山鉾やん。もうすぐ宵山(よいやま)やからな。まさか、ポチ、祇園祭り知らんの? そんなんでよう舞妓になるなんて事を・・・」
ずーんと落ち込む知恵利。
奈々緒「冗談やって。ていうか。なんで舞妓になろうと思ったん?」
知恵利「小学生の頃、修学旅行で京都に来たことがあって。すっごくきれいな舞妓さんに出会ったんです」

○知恵利の過去回想
小学6年生の知恵利が、花街で愛らしい舞妓(15歳くらい)に目を奪われる。
その顔は、奈々緒の部屋で見つけた落とし物ーーー写真の人物にそっくりで。

インサート
#1 奈々緒の部屋を掃除中、本の間から落ちたものを拾い上げる知恵利。
それは舞妓の映った写真だった。(#1のネタばらし)

知恵利「その舞妓さんが、奈々緒さんのお部屋にあった写真の舞妓さんにそっくりなんですよ!
奈々緒「・・・写真、見たんか?」
知恵利「え、あ、勝手にごめんなさい! 本の間に挟まれていたので、落ちてしまった時につい。お知り合いですか? それとも超有名な舞妓さんなんですか?」
奈々緒、何かを知っているような顔つきになって。
奈々緒「さあ・・・。もらった本に挟まってたもんやから。僕にはようわからんなぁ」
知恵利「そうですか。奈々緒さんにもよく似てらっしゃったから、てっきりご家族の方かと思いました」
奈々緒、スッと表情を失って。
奈々緒「僕に家族なんておらんよ」
知恵利「え?」
奈々緒「ええやん。そんな話。まず、そのダッサい服着替えるで!」
強引に話題を切り替える奈々緒。

○繁華街・百貨店
婦人服の着物売り場。
色とりどりの浴衣がそろっている。
それらの値札を見て目玉が飛び出そうなほど驚く知恵利。
知恵利(M)「ゼロの数が・・・ゼロの数が・・・」
驚く知恵利をよそに、やや不満げな奈々緒。
奈々緒「デパートで服なんか滅多にかわへんねんけどな~」
知恵利「ですよね。いつもはユニクロとかしまむらで買いますよね!」
奈々緒「ん? 聞いたことないなぁ。身の回りのもんは全部、昔から置屋を出入りしてる呉服商から仕入れてるから。市場に出回っているものなんか着たことないよ。この服も旦那様からの贈り物やし。自分でもの買うことなんて、ない」
知恵利(M)「住む世界が違いすぎます!!!」
奈々緒「今日は時間も限られていることやし、しゃーないなー」
奈々緒、一番値段の高い浴衣を手にして。
販売員を呼びつける。
奈々緒「すみません。これを、この子に着せたってください。そのまま買って出ます」
キラキラオーラ全開の奈々緒。
販売員「はっ! かしこまりました!」
奈々緒のあまりの美しさに、やや惚けている販売員。
× × ×(時間経過)
試着室から浴衣を着た知恵利が登場。
知恵利によく似合う。
奈々緒、やや目を見張って。
奈々緒「うん。僕の見立てに間違いはなかったな。ほな行こう」

○鴨川・河川敷(夕方)
浴衣姿の知恵利と奈々緒。
手をつないで歩いている。
知恵利(M)「本当にデートみたい・・・。奈々緒さんの手、こうして繋ぐとやっぱり大きいな」
奈々緒「今日な、ホンマは僕が気晴らししたかってん」
知恵利「・・・最近、お花に行くとき、元気なさそうでしたね」
奈々緒「いま、厄介な“カラス”に捕まっててな。ちょっとウンザリしてた。だから、今日はデートしてくれてありがとう」
ニッコリ微笑む奈々緒。
知恵利、ボッと赤くなって、
知恵利(M)「その笑顔は反則・・・・!!!!」
思わず両手で顔を覆う。
奈々緒、下駄を履いた知恵利足を見て。
奈々緒「足、しんどない?」
知恵利「ちょっとだけ・・・普段履かないので」
奈々緒「休憩しよか。あそこ座る?」
人気のない場所のベンチに腰掛ける奈々緒と知恵利。
奈々緒が下駄の鼻緒を足に合うように調整している。
その横顔をぽーっと見つめている知恵利。
知恵利(M)「今日の奈々緒さん、いつもより優しいしカッコいいし。王子様みたい・・・。わたし奈々緒さんのこと、本当に好きになっちゃったかも・・・」
奈々緒「なんなん? さっきから人の顔じーっと見つめて。キスして欲しいの?」
知恵利「え、そんな・・・」
知恵利(M)「顔に出てた?! 恥ずかし!」
奈々緒、知恵利を見つめて。
奈々緒「今日の知恵利、かわいい。すごく」
知恵利「今、名前でーーー」
奈々緒、知恵利にキス。
いつもよりも濃厚。
頭を抱き寄せて呼吸が荒く激しくなっていく。
知恵利(M)「奈々緒さんとキスしていると、頭がおかしくなりそう・・・このままどうなってもいいって思っちゃう・・・」
くちびるを離して、
奈々緒「なんで拒まへんようになったの? キス」
知恵利「・・うれしいからです・・・奈々緒さんとキスすると、胸の奥がぎゅーってなって、もっともっと欲しくなっちゃうんです・・・ヘンですか?」
奈々緒、かぁっと熱くなって。
奈々緒「いや、ヘンになってるのは、僕のほうかも。」
切なげに言う奈々緒。知恵利をぎゅっと抱きしめる。
奈々緒「なぁ、ポチはどこにもいかんといてな」
知恵利「どこにも行きません」
奈々緒の背中を優しく抱きしめる知恵利。
知恵利(M)「でも、こんなに何度もキスをしても、デートをしても、わたしにはまだ、奈々緒さんのことがわからないことだらけ・・・」
抱きしめられたまま、奈々緒の痣のある場所をそっと指でなぞる知恵利。
シャツの首元から痣が見える。
以前よりも痣の範囲が広がっていてーーー

(第3話 隠し事とデート 以上)
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