愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
一緒にいるために
 ここはどこだろう。

 さやかさんが来て……。
 そこまで思ったが、目の前が暗い。夜ではなく目をふさがれていることに気づく。そして、手も拘束されていて、それをとることができない。

 そこで一気に恐怖が襲ってきた。視界を奪われたことで、何がつぎに起こるのかわからない。
「いや、だれか」
 そう声をだしたが、掠れて音にならない。
 怖い、弥生、恭弥さん!!

「咲良!!!」

 その声と同時に力強く抱きしめられる。慣れてしまった香り、温かい腕。

 見えなくてもわかる彼に、ボロボロと涙がこぼれる。それが目隠しをされていた布にしみこんでいく。
 すぐにそれは外され、私の顔を泣きそうな恭弥さんがのぞき込む。

「大丈夫か?」
 何度か頷いて見せると、恭弥さんはまた私を抱きしめた。
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