愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
「俺のせいで本当にごめん。俺が、俺が不甲斐ないばかりに」

 さやかさんの恋愛感情を知らずにいたのなら、急に現れた私の存在が気に入らなかったのは仕方がない。

 それでも、恭弥さんが気にしてしまうのは仕方がないのかもしれない。

「大丈夫です。恭弥さんがきてくれたから」
 泣き笑いでそう伝えると、恭弥さんは初めて安堵したように息を吐いた。

 その後、元樹の計らいで、先ほどはさやかさんのドラマかなにかの撮影ということで、なんとか場は収まったらしい。


 そして、助け出された後、場所を変えたホテルの一室で、私は弥生を抱きしめたまま、さやかさんの謝罪を聞いていた。
 恭弥さんは、私が嫌ならば聞かなくてもいい、そう言ってくれたが、私は彼女と会うことに決めた。 

そこには事の重大さを知って、恭弥さんの両親もいた。

「ごめんなさい。薄々あなたが、恭弥をだますような人じゃないとは気づいていたのに」
 
その言葉を私は何とも言えない気持ちで聞いていた。確かに元樹と親しくしていて、そういう印象を持たれたのなら、私にも非があるのかもしれない。
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