愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
混乱する心
 その後、どうやって帰ったかあまり記憶にない。
 
 人参を買わず帰った私に、母はかなり怪訝な表情をしていたが、昔の友人に会ったと伝えれば納得してくれた。
 
 弥生に夕飯を食べさせ、一緒に風呂に入ると、すぐにうとうとし始めた。
「弥生、もう寝ようか」
 時計を確認すると、二十時をまわっている。そのことに胸がざわつくも、弥生に悟られないように笑顔を作る。

 いつも通り絵本を読み聞かせていると、すぐに寝息が聞こえてきた。

「おやすみ」
頬を撫でてリビングに戻ると、両親はゆっくりとしていた。その姿を見て、私は普通を装って二人に声をかけた。
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