ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「───男に二言はないな、大地くん?」
「ありません」

瞬間、父さんの手が伸びて、大地の両手首をガッチリとつかんだ。
勢い余ってテーブルにぶつかったらしく、鈍い音がした。

「大地くん……君は……君は、若いのに、なんて見る目のある、いい男なんだ……!」

ぶつけた痛みなのか、父さんの目には、涙が浮かんでいる。
私は、あっけにとられて父さんを見た。

「舞美、祝杯だ。ビール持ってきなさい。大地くんの分も」
「大地は、未成年だってば」
「いいから、早く!」
「もう……!」

仕方なく、グラスとビールを用意する。もちろん大地には、ウーロン茶だけれども。

父さんは、大地にグラスを持たせると、感極まったように、乾杯っ、と言って、一気にグラスを(あお)った。

空になったグラスを差し出され、ビールを注いでやる。
父さんは、そんな私を哀れむように見ながら、語り始めた。

「───舞美はね、親の私が言うのもなんだが、決してよそのお嬢さんに見劣りするような娘ではないんだよ。
母親に似て、可愛いらしい顔立ちをしているし、接客をしているせいか、
『笑顔が素敵なお嬢さんですね』
と、同僚にもご近所さんにも、評判が良いんだ。
縁談話も何度あったか、分からないくらいだよ」
「───えぇ、そうでしょうね」

父さんの迫力に、最初は驚いていた大地だったけど、そこで納得したように相づちをうった。
そんな大地の反応に気をよくしたのか、父さんの力説は続く。
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