ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
大神ゼウスに愛された、美しいアルカディア王の娘カリストーが、その子供を宿したばかりに、嫉妬に狂った女神ヘラによって、熊に変えられてね。

そうとは知らずに成長した息子のアルカスに、槍で殺されそうになるんだけど、悲劇を避けようとしたゼウスが、アルカスを子熊に変えて、
カリストーと共に天に放り投げて、星座になったんだってさ。

ふふっ……そもそも、浮気なゼウスに見初められたことからして、悲劇じゃない?

でも、ギリシャ神話って、そういう話が多かったなー。男も女も、美しいってだけで、神々の寵愛(ちょうあい)や嫉妬の対象になってたっけ」

「───……あんた、よく知ってるわね、そんな話」

あきれて見返すと、大地は肩をすくめてみせた。

「前にも話したと思うけど、僕の家にはゲームとか漫画とかがなくて、小学生の頃は学校の図書室で、よく本を読んでいたんだ。

その頃は、神話とか物語……昔話みたいなものが、好きだった。
だから、先生に譲ってもらった文学作品なんかは、高校に入る前くらいに、やっと読んだんだけどね」

遠い目をして、大地は星空を見上げる。半乾きの髪が、さらさらと風に踊らされ、瞳に(かげ)がかかって見えた。

小学生の頃なら大地にとっては、それほど昔でもないだろうに。
どうして、こんな遠い過去を思いだすような目を、しているんだろう。

気づくと指を上げ、大地の前髪に手を伸ばしていた。直後、しまったと思う。

……何、触ってんだ、私……。
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