100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
(どうして緑沢さんが。私、なにか恨まれるようなことをした?)
考えても思いあたらない。
ストレス解消のいたずらのつもりだったのか、それとも迷惑行為が元から好きなのかと考えたが、そんないい加減な人が厳しいCAの世界で活躍できると思えなかった。
しかし困惑しているのは和葉だけのようで、どうしてこんな真似をしたのかと問うCAはいない。
なぜか皆がそろって気の毒そうに彼女を見ており、誰かがボソッと呟いた。
「諦められないって、つらいよね……」
(なにを諦められないの?)
説明してほしかったが、時間切れのようだ。
腕時計に視線を落とした五十嵐が、しんみりとした雰囲気を破るような声で指示をする。
「七分後に予定通り搭乗を開始します。チーフパーサーは緑沢さんをオフィスに連れていき、事情説明をして至急、交代要員の手配を。他のクルーは通常通りの業務に戻ってください。この件にお客様は無関係です。桃園国際空港行きのお客様に最高のフライトを。気を引き締めていこう」
「はい」
うなだれる緑沢を連れた美玲が搭乗口へ向かう。
他のCAたちはきびきびと動きだしたが、和葉はポカンと口を開けて動けずにいた。
(あんなに焦ったのに、あっという間に解決した。本当にオンタイムで飛べるなんて……)
和葉が原因のアクシデントにならずにすんだのは、すべて五十嵐のおかげだ。
隣を見ると視線が合い、鼓動が大きく跳ねる。
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