100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
出世が早いのは父親が乗員室長だからだと、これまで陰口を叩かれてきた。
これ以上嫌われると指示が通りにくくなるという思いから、仲間を守ろうとしたというのが彼女の自己分析だ。
(それだけじゃないように感じたけど。美玲さんは自分に厳しい人なんだ)
感心していると、美玲が数秒黙ってからクスッとした。
「気づいたのはもうひとつあるの。五十嵐さんを見直した。失礼かもしれないけど、今までは技術と見た目だけ優れたコーパイだと思っていたの。人気にあぐらをかいているところがあるんじゃないかと、粗探しをするように見てしまっていたわ。父があんまり彼ばかり褒めるから。私のことも褒めてほしいという嫉妬ね」
「そうなんですか」
美玲の父、堂島室長は若干強面で厳しい人だと聞く。
娘の前でそういう話をしているとは意外だが、婚約者を褒められて嬉しくなる。
(婚約者といっても形だけ。私が照れることないのに)
的確な判断力や解決力、説得力や思いやり――今回の件で五十嵐に感じた思いをひとつひとつ噛みしめるように言葉にした美玲が、ふと真顔になって和葉を見た。
「ねぇ、今から五十嵐さんを好きになっても遅い?」
「ええっ!?」
不意打ちの宣戦布告は衝撃で、足を一歩引いた。
すると彼女がエレガントな腕時計に視線を落とし、にっこりと微笑む。
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