100日婚約~意地悪パイロットの溺愛攻撃には負けません~
「その後に新型機の説明会があったんです。お腹が空いたので、サンドイッチを買って展望デッキで食べてから帰ろうと思ったんですけど……」
メニューの立て看板に眉根を寄せると、「来い」と言われた。
さっさと店内に入った彼を追いかけ、慌てて止める。
「ここ、高いので。コンビニにします」
「奢ってやる」
「えっ、やった! ありがとうございます。海老とアボカドのサンドイッチとオレンジジュース。オニオンリングとマロンパイもいいですか?」
食欲に支配されるがまま、張り切って食べたいものを全部言うと、会計カウンター前の列に並んだ彼に呆れの目を向けられた。
「遠慮を知らないのか」
「そ、そうですよね。すみません、腹ペコだったのでつい。サンドイッチだけお願いします。もしかして五十嵐さんも金欠ですか?」
「お前と一緒にするな。俺はコックピットパネルを二十一万円で落札しないから昼飯代に困ることはない」
それは一昨日、和葉がネットオークションで購入した小型ジェット旅客機の計器板のことだ。
和葉にすると高額だが、彼の家に住んでいる今は家賃と光熱費は無料で、一緒に食事をする時は食費も出してくれるので、浮いた生活費をついつい趣味に注ぎ込んでしまう。
「私のオークション事情をどうして把握しているんですか?」
「知られたくなければ、競り落とした喜びを部屋の中で叫ぶな。金額まで筒抜けだ」
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