100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
品物を受け取った和葉は第二ターミナルの五階に上がり、展望デッキに出た。
眼下には駐機場、奥にC滑走路と東京湾が見える。
穏やかな空に向け飛び立ったのは、他社の大型ジェット旅客機だ。
(すごく気持ちいい)
新人の頃はよくここに来た。
離着陸を眺めながら航空整備士という夢を叶えた喜びを味わっていたのだが、景色に新鮮味がなくなってからは足を運んでいない。
久しぶりだと感動を思い出し、フェンスに駆け寄ってしばし景色を堪能した。
離陸と着陸を三回ずつ見た時、私服のジャケットをラフに羽織った五十嵐がやってきた。
「食べていないのか」
「あっ、お腹が空いていたのを忘れていました。久しぶりにここから滑走路を見たので嬉しくて」
「羨ましいな。バカがつくほど空港を好きになれるのが」
「言い方!」
ツッコミを入れた直後に目を瞬かせた。
(五十嵐さんは好きじゃないの?)
パイロットなのだからそんなはずはないと考え、ふと思い出す。
二十日ほど前に駐機場で御子柴から聞いた話だ。
『努力を惜しまず飛び抜けて優秀。五十嵐なら機長試験も最短でクリアするだろう。来年には最年少機長だ。それなのに空を飛んでいる時のあいつはいつもつまらなそうな顔をしている。なぜパイロットになったのか、気になって聞いてみたことがあるんだが』
答えはくれず会話を打ち切られてしまい、その疑問はまだ解消していない。
(今なら聞ける……?)
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