100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています

思い切ってパイロットになった動機に触れてみようと鼓動を高まらせたが、彼が数メートル先を指さして歩き出した。
「テーブルが空いたぞ」
展望デッキにはベンチやテーブルつきの休憩スペースがいくつかある。
天気のいい昼時は満席で、家族連れやカップル、ビジネスマンなど様々な人が利用していた。
「早く来い」
「あ、はい」
（やっぱり聞けない。楽しい雰囲気が壊れたら怖いから、またの機会にしよう）
白い丸テーブルに買ったものを広げる。
木目のベンチはテーブルに沿った形をしていて、ひとり分の間隔を空けて座った。
早速食べ始めると、オニオンリングはカラッと揚がっていて歯触りがよく、玉ねぎの甘みが優しい。
コッペパンに具を挟んだサンドイッチは、海老のプリッとした食感とアボカドのクリーミーさがよく合っていた。
「美味しいですね」
「ああ」
肯定してくれた彼だが、特に感動もない様子で淡々とクラブハウスサンドを口にしている。
（最高に美味しいと思うのは、私だけ？）
航空機を眺めながらのふたりでのランチ。心の中ではしゃいでいるのは自分だけのようで、オレンジジュースを飲むふりして口を尖らせた。
その時、和葉の通勤用のバッグの中で携帯が鳴った。
取り出すと母からで、帰省の日にちを問うSNSアプリのメッセージだった。
金欠と忙しさで、今年に入ってから一度も帰っていない。