100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
居間に入ると誰もいなくて、卓上には飲みかけのお茶と手つかずの茶菓子が、なぜかひとり分だけ置かれていた。
「どこに行ったんだろう。夕食の買い物?」
足腰が弱ってきた祖母まで連れて買い出しに行くのはおかしいと思いつつも問えば、美月がポケットから携帯を出した。
「おかーから電話」
なにか言われて返事だけした妹が、電話を切って居間を出る。
「ビーチに来いって」
「ビーチパーティーするの?」
「うん。盆と正月がいっぺんに来たからお祝いだってさー」
「私が帰省しただけで?」
(ん? 盆と正月という言い回し、私も最近使ったような気がする)
いつだったかと考えたが思い出せず、妹と一緒にくぐったばかりの玄関を出た。
ビーチパーティーも沖縄ならではの習慣で、砂浜でバーベキューをしながら家族や友人とお喋りを楽しんだり、会社の歓送迎会をしたりもする。
自宅を出て五分ほど歩くと波音が聞こえてきて、砂利の細道を抜けると急に視界が開けた。
ヤシの街路樹が並んだ向こう側に広がるのは、白い砂浜と透き通る青い海。
ビーチには東屋があり、石のグリルとベンチが備えつけられている。
海水浴シーズンなら、早い者勝ちの利用だ。
沖縄といえども十一月に海水浴を楽しむ人はほとんどなく、シーズンオフの砂浜には和葉の家族と犬の散歩中の人しかいなかった。
(この光景も懐かしい)
子供の頃からお祝い事があればここでバーベキューをした。
< 140 / 243 >

この作品をシェア

pagetop