100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
他のことを考える余裕も生まれ、真っ先に頭に浮かんだのは和葉の顔だった。
「和葉は……」
「なにか言ったか?」
「あ、いえ、なんでもありません」
時刻は二十三時二十分。
予定通りのフライトでなかったため、このあとにやることも多い。
明日のスケジュール調整もしなければならず、近くの宿泊先に向かうまでに一時間以上かかるだろう。
(帰宅しないのを心配しているだろうか)
少しはそうであってほしいところだが、彼女のことだからジャンク部品のオークションに夢中になっていそうな気もした。
(連絡は不要だな)
心配していたとしても、同じ業界に勤めているのだから、帰れない場合があるとわかっているはずだ。
それに明日、和葉が早番で出勤したら、夜間の到着便に大きな乱れがあったと知ることになる。
(声を聞きたい気分だが、やめておこう)
退勤してからの連絡だと、寝ているところを起こしてしまう可能性が高い。
連絡したい気持ちを抑えた五十嵐は、和葉を思いながら駐機場へと機体を進めた。

* * *

翌朝、八時に出勤した和葉はコントロールルームのパソコン前に立ち、驚きの声をもらした。
昨夜の嵐で二十一時以降の出発便はすべて欠航。到着便にも大きな影響が出たのを今、知ったからだ。
時間的に五十嵐が乗務した福岡便は関係ないと思ったが、念のために調べてみると、羽田への到着がつい先ほどだったとわかった。
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