100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「一時間半ほど前に羽田に戻ったところだ」
「し、知っています」
「堂島さんから声をかけられ、話を聞いた。勝負についての話だ」
落ち着いた口調だが、顔を見れば不満げで慌てて弁解する。
「私は勝負しないと言いました」
「ああ。それも聞いた。自信がなさそうで、受けてくれなかったと言っていた」
制帽の鍔の下で眉間に皺が寄っている。
自分の知らないところで勝負されるより、自信がなくて受けなかったことの方が不満らしい。
「俺が堂島さんを選ぶと思ったのはなぜだ?」
「そ、それは……」
航空整備士として一人前に働けている自信があっても、女性としての魅力には欠けると感じている。
それなのに才色兼備で非の打ちどころのない美玲にライバル宣言されたのでは、負けると思って当然だろう。
そう説明して、半ばやけっぱちの気持ちでつけたす。
「五十嵐さんが私を気に入ってくれているのは知っていますけど、その程度です。あと五日で婚約解消ですし、どうやって自信を持てばいいんですか」
「つまり、勝負を受けなかったのは片想いが原因か?」
「そうですよ! 悔しいけど私の負けです。惚れてしまったんです。でも結婚はしませんから。恋愛に不向きな性格だとつくづくわかりました。片想いが苦しくて仕事に支障が出ます」
冷たい雨粒が斜め上から頬を打つ。
呆れて無言になった彼を見て、〝気に入っている〟から格下げになったのを感じた。
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