100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
これ以上期待が膨らまないように制御するのが大変で、昨日のハラハラと違った意味で心乱され、仕事が手につかなくなりそうだ。
「意地悪!」
雨の空に向けて文句をぶつけたあとは、ふくれっ面に笑みが戻った。

勤務を終えて急いで空港をあとにした。
今ではすっかり慣れたセレブなマンションに着き、エレベーターのボタンを連打する。
(好きだという言葉が早く聞きたい)
廊下を走って玄関前で急ブレーキをかけると、はやる気持ちをなだめて深呼吸をした。
(張り切っているのがバレたら恥ずかしいから、ここはあえて余裕があるところを見せよう)
解錠して家に入ると、ふんわりと出汁の香る美味しそうな匂いがした。
ダイニングテーブルでは土鍋がぐつぐつと煮えており、五十嵐が冷蔵庫から缶ビールを出していた。
「おかえり」
「ただいまです。そのお鍋は……」
コートを脱ぎながら土鍋に近づく。
昨夜の鍋は火にかけることなく、切った材料はビニール袋に入れて冷蔵庫にしまっておいた。
「和葉が用意してくれたものに具材を足した」
あったらよかったのにと昨日思ったつくねに加え、ホタテとエビとカニが入っている。
「豪華!」
「今後は俺が帰宅しなくても夕食は食べろよ」
一食抜いたのを見透かされ、苦笑してごまかす。
「取られると思って気が気じゃなかったのはわかるが」
つけ足された余計な言葉には赤面し、口を尖らせて言い訳した。
< 193 / 243 >

この作品をシェア

pagetop