100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「初めまして、金城和葉と申します。五十嵐さんとおつき合いを――あ、違った。け、け、け」
「毛?」
彼の名前は慧(けい)という。
『慧さんとおつき合いさせていただいております』と言うつもりだったのだが、慣れない呼び方を恥ずかしく感じた途端、口が回らなくなってしまった。
目を瞬かせている母親に、彼が嘆息しながら説明する。
「かなり緊張しているんだ。職場では上司に盾突くほど強気なんだが」
(バラさないで!)
「毛ってなんだよ。四か月以上も一緒に暮らしておきながら、まさか俺の名前を覚えていないのか? そんなことではライン確認責任者の資格は取れないぞ」
仕事で欲しい資格はたくさんあるが、今目指しているのはライン確認責任者だ。
それがあれば浅見のようにチームリーダーになれる。
パイロットに機体の状態と整備について説明し、フライトログブックに自分の名前をサインできるのだ。
和葉にその資格は無理だと言われると、ムッとする。
「ちゃんと覚えていました。普段は五十嵐さんと呼んでいるから恥ずかしかっただけです。慧さん、慧さん、慧さん。ほら、もう慣れました。これからはそう呼びますし、慧さんが機長になるより先にライン確認責任者の資格を取ってみせます」
菓子折りの紙袋を持った手でガッツポーズを取ると、してやったりと言いたげに慧の口角が上がった。
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