100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「単純ですぐにムキになり、真っすぐ。こういうやつなんだ。母さん、よろしくな」
(しまった……!)
できのいいお嬢さんと思われたかったのに、彼の策にまんまとはまって素顔を見せてしまった。
焦る和葉を見て吹き出したのは母親だ。
「長年夫婦をやっているみたいに息がぴったりね。ふたりの楽しい生活を垣間見た気分よ。慧のお相手が和葉さんでよかったわ。さあ、入って」
できのいい嫁を望んでいるわけではないようだ。
気に入ってもらえたのを感じてホッとし隣を見ると、目を細めた彼にポンと頭を叩かれた。
「おじゃまします」
十二畳ほどのひろさのリビングに通されると、南西からの日が心地よく差し込んでいた。
ふたり掛けのソファを勧められ、慧と並んで座る。
「海が見えるんですね」
高台なので、リビングの窓からは閑静な街並みとその奥に広がる海が見えた。
「眺めだけはいいのよ」
花柄のカップに紅茶を淹れ、地元の洋菓子店のものだというチーズケーキと一緒に出してくれた。
絨毯の上の座布団に座った母親に彼が言う。
「ここは坂道がきつい。心臓に負担がかかるから、平地に引っ越したらどうだ?」
「このくらい大丈夫よ。慧は心配性ね。そうそう、心臓といえば来週、入院するから書類にサインをお願い」
「えっ、入院!?」
元気そうに見えるがそんなに病状が悪いのかと和葉は驚いたが、母親はなんてことないような顔をしている。
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