100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
「入院中の私が、翔の夢が叶わなかったと嘆いたせいよね。ごめんなさい。慧の優しさは嬉しいけど、翔の代わりをしてほしいなんて、お母さんは少しも思っていないわ。そんなことをされても胸が痛いだけ。もしパイロットが苦痛なら、すぐに転職しなさい。慧の人生はあなた自身のものよ。お願いだから自分が納得する生き方をして」
彼が兄の夢を継いだのは、持病を抱える母を元気づけるためだった。
しかしその優しさが母を傷つけたようで、人生を考え直すように言われた彼は困ったように目を逸らした。
「考えておく……」
(パイロットを辞めてしまうの?)
母親のために、苦しくても飛び続けなければならない。そんな彼の境遇をこれまでは気の毒に思っていたが、今は辞めないでほしかった。
(だって子供の頃はパイロットになりたがっていたんだもの)
口を挟むべきか迷っていると、彼の母に話題を変えられてしまう。
「せっかく和葉さんが来てくれたのに、変な空気にしてごめんなさいね。紅茶が冷めてしまったから淹れ直してくるわ。ケーキを食べて。このお店、行列ができるほど美味しいのよ」
そこから先は他愛ない話をし、一時間ほどして慧の実家をあとにした。
車に乗って坂道を下る途中に彼が言う。
「寄り道していいか?」
「はい」
下り切る前に横道に折れて、少し進むと神社が見えた。
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