100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
御子柴が乗務する便を整備していた忙しい時に声をかけられた。
『やあ、五十嵐の奥さん。どうだい、うまくいってる?』
『あ、はい。エンジンに異常はありません』
『違うよ。五十嵐と君のこと。今月の頭に、俺と組んだ便でダイバードした時があっただろ。あのあとから機嫌がいいんだよ、あいつは。勉強にも熱が入ってさ。結婚の日取りでも決まった?』
(鋭い……)
結婚の日取りではないが、和葉との関係で大きな変化があったのはその通りだ。
美玲と一夜を過ごしているのではないかと泣いた翌日、ダイバードで帰宅できなかったのだと知り、その結果お互いの気持ちを確認できた。
だからといって慧の様子が変わったということはないのだが、長いつき合いの御子柴の目には張り切っているように映るらしい。
『あの時、ダイバード先の空港も悪天候で大変だったんだよ。ランディングを五十嵐に任せようとしたら最初は嫌がってさ。自信がないのかと聞いたら、あいつがなんて言ったと思う?』
『わ、わかりません』
『「あります。あるのが少々不安だったのですが、過信ではないようなので安心しました」だとよ。生意気だろ。本当に可愛くないやつだ』
言葉とは裏腹に御子柴の目尻にはたくさんの皺が寄っており、好意的に捉えているのが伝わってきた。
あの日は悪条件が重なり疲労が溜まるフライトだった。
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