100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
到着までは一時間ほどあり、眼下に陸の影はない。
兄の代わりにパイロットになったが最近、心境の変化があったという話をしているうちに水平線の輝きが徐々に強まり、太陽が顔を出すと一気に新鮮な朝日がコックピット内に差し込んできた。
それを見た瞬間、幼い日の思い出が鮮やかに蘇った。
(そうだ、兄さんと早朝に公園へ行ったんだ)
あれは三歳の夏。空港に飛行機を見にいく少し前のことだ。
夏の日の出は早く、目覚めてしまった慧は隣で寝ている母を起こそうとした。
すると反対側で寝ていた兄に止められた。
『起きるの早いよ。母さんは仕事で疲れているから、もう少し寝かせてあげよう』
小学生の兄は夏休みに入っていて、慧の保育園の送迎をしてくれたり遊んでくれたり、いつもよく面倒を見てくれた。
その時も慧につき合って早起きし、母の睡眠を邪魔しないように公園に連れ出してくれた。
ラジオ体操が始まるのは一時間も先なので、公園は貸し切り状態だ。
ブランコにすべり台、砂遊びに昆虫探し。兄の手を借りてジャングルジムのてっぺんまで初めて上り、見晴らしのよさにはしゃいだ記憶がある。
『お兄ちゃん、高いね。慧も上れたよ。すごい?』
『うん、すごい。でも、このくらいじゃまだまだ。手を離してみなよ。兄ちゃんが落ちないように支えてあげるから』
少し怖かったが兄を信じて手を離し、両手を横に開いてみる。
< 234 / 243 >

この作品をシェア

pagetop