100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
動揺しているのが丸わかりだったらしく、面白がっているような目をする彼が背もたれの縁に片腕をのせて体ごとこちらを向いた。
「御子柴キャプテンの思惑通りになるのは癪だが、それがベストだろう。和葉」
突然、名前で呼ばれたためコーヒーにむせた。
ティッシュペーパーを箱ごと渡してくれた彼が、さらに驚くことを言う。
「つき合おう。それで和葉はここに住めばいい。セキュリティーの高いこのマンションなら、たとえ湯崎に居場所を突き止められても侵入はされない」
「こ、交際と同棲? 冗談ですよね?」
「本気だ。お前がさっき言ったんだろ。交際関係にないから同居はできないと」
「言いましたけど、ニュアンスが違います。彼女でもないのに部屋を借りるのは申し訳ないと――いえ、そこはもうどうでもいいです。五十嵐さん、私が好きなんですか?」
真顔で黙る彼に見つめられ、鼓動が振り切れんばかりに高鳴った。
(仕事が楽しくて恋をする気がなかったから、突然告白されても困る。でも振ってしまうのはもったいないような……)
湯崎から守ってくれた時は不覚にも胸がときめいた。
今後、彼を好きになる可能性はどれくらいあるかと考えたが、答えが出てこない。
(どうしよう。考える時間をもらわないと返事ができない)
恋愛問題で心を忙しくさせたのは中学生の時以来で、困っているのに悪い気はしなかった。
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