100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
和葉が一生懸命に作ったのがわかったから、期待を裏切りたくなかったのかもしれない。
(私を喜ばせたかったんだ……)
その気遣いに胸が温かくなるが、無理をさせて申し訳なく思う。
(早めに謝りたい。五十嵐さん、今日はどの便に乗るんだろう)
今は自分の気持ちに言い訳せず、心から彼に会いたいと思っていた。

昼休憩を終えて午後二機目の整備にあたる。
コックピットの機長席に座る和葉は、外にいる整備士と無線で話しながら操縦桿を握っていた。
「エルロン動かします。どうですか?」
『グランドクリア』
エルロンとは補助翼のことで、すべての翼の動作チェックを出発前にライン整備士が行う。
この機体は十六時二十分発の桃園行き。搭乗開始は一時間半後で、珍しく整備時間に余裕があった。
計器のチェックもすんで席を立つと、出入口にパイロットの姿が見えた。
入ってきたのは五十嵐で、和葉の顔が輝く。
(会えた!)
「この便の整備は和葉だったのか」
長袖のワイシャツ姿の彼は黒革のバッグふたつを足元に置いて、ハンガーにジャケットをかけようとしている。
茄子についての謝罪の他にも言いたいことがあり、いっぺんに伝えようと気が急いた。
「ジャケット姿が見たいです。あっ、かっこいいだろうなと思っただけで深い意味はないです。それと今から桃園便ということはステイですか? 今晩、帰ってこないのは聞いてナス」
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