100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
食事中の話題として、コックピットから見えるオーロラについて尋ねたことがあるのだが、『きれいなんじゃないか』とつまらなそうに返事をされ、その話題は終わってしまった。
パイロットなら皆、空を飛ぶのが好きなはずだと思い込んでいたが、御子柴の話を聞いたあとでは、五十嵐はなにか違う気がした。
(どうしてパイロットになったのか知りたい。思いきって聞いてみる?)
就職試験の面接官ではないのだから、唐突に切り出すのがためらわれる。
彼の心の中を覗こうとしているようで、百日だけの婚約者が踏み込んではいけないような気がした。
ターミナルに向かう御子柴の背を恨めしい気持ちで見送っていると、数メートル離れてから急にUターンして戻ってこられ、慌てて姿勢を正した。
「そういえば茄子料理、作った?」
「は、はい。美味しいと言ってもらえました」
誕生日以降も茄子とトマトのスパゲッティを作って一緒に食べたことがある。
彼の好物を教えてくれて感謝しているのに、なぜか「ごめんな」と謝られた。
「間違えて、あいつが唯一苦手な食べ物を教えてしまったよ」
「ええっ!?」
「五十嵐のやつ、困っただろうな。面白――じゃなかった、気の毒に。それじゃ」
御子柴が笑いながら足早に遠ざかり、唖然とした和葉が残された。
(無理して食べてくれていたの?)
苦手だと言わず、勧めたお代わりまで完食したのはなぜだろう。
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