【完】恋情を拗らせた幼なじみ社長は、訳アリ令嬢を執愛している。



「……二度揚げだから、百八十℃にしてきつね色になってから取り出す」


 甘酢だれに揚げた鶏肉を漬けていると、もう外は茜色だった。急いで千切りキャベツとチキンを盛り付けてタルタルソースをたっぷりとかけているとチャイムが鳴った。なのでモニター確認をすると、知らない女性が写っていた。

 このマンションはセキュリティが抜群なので、こちらがロック解除を押さないと入れない仕組みとなっている。

 だから出なくていいと言われていたが、大切な用だったらいけないと思ってだれなのか問うことにした。



「どちら様でしょうか?」

「……私、富萊社長の秘書・大崎と申します。社長に頼まれて社長の忘れ物を届けに来たのですが開けていただけますか?」

「秘書さんですか? 大崎さん?」

「はい、そうです。奥様でしょうか? 早く開けてください。急いでるので!」


 彼女は焦っていたが、私が把握する限り秘書でオオサキという人はいなかったはずだ。
 それに、碧くんの秘書で女性はいない。結婚して秘書の方を紹介されたし、家には極力は来ないと言っていて忘れ物の時は必ず連絡を入れるからと言っていた。

 知らない間に採用されたなんてわけないし……一応、彼に確認しよう。



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