イケメンカリスマ美容師の沼は思った以上に深そうです
 クレジットカードでの精算処理をしながらボソリとつぶやいた彼の言葉が気になって、自然と聞き返してしまう。

「大勢の男の目を引きそうだから。変なのに引っかからないようにくれぐれも注意して?」

 彼は私を見つめ、眉間にキュッとシワを寄せておどけるような顔をした。
 冗談なのか本気なのか、私にはどちらかわからない。私が男性の目を引くことなんてありえないから、たぶんお世辞だろう。

「髪は綺麗にしてもらいましたけど、私は元が地味なので。……あはは」
「冗談で言ってるんじゃないんだけどな」

 なにげなく会話を交わしていたこの場の空気を一刀両断するように、彼が鋭く言い放った。
 快永さんは常連客の私の身を案じてくれている。心配しなくても、誰からも言い寄られたりしないのに。

「まぁでも、楽しんできてね」
「……ありがとうございます」

 入口のドアを開け、快永さんがいつものように見送ってくれた。
 本当は同窓会なんてどうでもいい。許されるのなら、彼の働く姿をずっと眺めていたい。
 そんなことを考えながら、ペコリとおじぎをして同窓会会場のホテルへ向かった。

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