生きたくても生きられない君と生きたくないのに生かされる僕の一年間ノート

10月。わかりあえないから、わかろうとするんだよ。〜交換日〜

10月31日 〜小児科〜  
「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」 
「僕、お菓子持ってないし。っていうか、何?その格好。」 
「ハロウィンじゃん。あなたは仮装しないの?はい、チョコいる?」 
「あ、ありがとう。ここは精神科とは大違いだね。とても同じ建物の中にある場所とは思えない。なんか楽しそうで、壁も看護師さんもメルヘンチック。お菓子禁止じゃないの?」 
「お菓子は禁止じゃないよ。ほどほどに食べれるものをみんな食べてる。精神科、って禁止令が多いよねー。病棟もそっけないし、特に隔離室なんか留置所。すること何にもない。そう思うと、小児科は天国だよね。院内学級もあるし、付き添いも、出歩くこともゆるい。」 
「小児科はいいなあ。その様子だと、君は精神科も知ってるの?」 
「精神科は、前にちょっとお世話になった。小児科は、ちっちゃい子どもばっかりだからそうでもしないと、怖くて治療が出来ないよ。それに、重い病気を持ってる子どもには天国、お空に行くときまで前向きに、楽しく生きてもらいたいじゃん。生き続ける前提、って言っても、病気は進んでいくばかりの子だって多いから。」 
「君は病気になって、きっと悟れたんだね。」 
「そういうなら、あなたもそうだよ。青春を謳歌出来ないのは、人生の中で、決して無駄なことではない。」 
「何かよくわからないけど、いいこと言ってる気がする。」 
「そうやって、ちょっとずつわかりあえばいいんだよ。」 
「他のひとの気持ちなんて、わからないよ。」 
「当たり前じゃん!わからないから、わかろうと思うんだよ。」 
「それは、どうして?」 
「んー、ノートに書いた。解決出来るかはわからないけれど。点滴があるから行くね。」
「そっか。じゃあ帰って読むよ。またね。」
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