妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 円香を認識しただろう彰史は、いつもの柔らかい笑みを浮かべて、「円香」と呼んでくれる。それに応じるように円香が彰史のすぐそばまで歩み寄れば、彰史は円香の肩に腕を回し、ぐっと自身へと引き寄せてくれた。

「紹介する。妻の円香だ」

 彰史と抱擁を交わしていた女性と正面から向かい合う。その女性を視界に入れるのは少し怖いが、彰史の存在に背中を押してもらうようにして、彼女と目を合わせる。

 すると、そこには彰史と少し似た印象の真っ直ぐな瞳があった。

「彼女は取引先の相川さん。今、仕事で世話になっている」
「初めまして。相川麻里(あいかわまり)です。よろしくね」

 相川というその女性はきれいな笑みを浮かべて円香に片手を差し出してくる。

 随分と気さくなその態度に、円香は戸惑いつつも、彼女の手に自分の手を重ねて、軽く握る。

「月花円香です。よろしくお願いします」
「かわいい奥さんね。これからデートでしょ? 邪魔しちゃ悪いから、私はもう帰るわね。また」

 相川は手をひらひらと振りながら、颯爽と円香たちの前から姿を消してしまった。

 想像とはかなり異なる展開に円香はポカンとする。

「円香、大丈夫か?」
「え? あ、はい」
「君が逃げなくてよかった」

 昔のことを持ち出されるとばつが悪い。円香は俯き加減で言い返す。

「……逃げませんよ。彰史さんのこと信じていますから」
「うん。だが、顔には『気になります』と書いてあるな」
「えっ」
「ははっ。まあ、詳しいことはあとでちゃんと話す。とりあえず移動しよう」

 笑いをこぼしている彰史に、円香は何か言ってやりたい気もしたが、彰史の言葉に異論はないから、大人しく彰史に付いていった。
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