妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 彰史が連れてきてくれたのは異国情緒漂うスペインバルであった。

 事前に彰史が知り合いから教えてもらったというおすすめの品を中心に注文し、料理が運ばれてくるのを待つ。店内は混んでいるし、料理が来るには少し時間がかかるだろう。

 話をするのにお誂え向きな時間が訪れ、彰史は相川について語りはじめる。

「相川はアメリカの企業に勤めていてな。今は仕事の都合で一時的に日本に滞在しているんだ」
「アメリカ!」

 円香はそういうことかと納得する。相川の第一印象にアメリカの雰囲気はばっちりと合う。相川のあの気さくな態度はアメリカの空気がもたらしているものなのだろう。

「彼女は海外生活が長いから、先程のようなスキンシップも当たり前なんだよ。あの抱擁に挨拶以上の意味はない」

 円香が不安に思ったあの光景に深い意味はなかったらしい。少しでも変な憶測をしてしまったことに、円香は申し訳ない気持ちになり、その顔に苦笑いを浮かべる。

「あー……そうですよね。確かにとてもフランクな方でしたね」
「うん。元々向こうで生まれ育っていて、高校の頃に親の都合で日本に来たらしい。で、また仕事でアメリカに戻ったから、向こうの文化が染みついているんだよ」
「えっ、それじゃあ、ほとんど向こうで? でも、日本語にまったく違和感ありませんでしたよ。すごいですね」

 相川の見た目は純日本人のそれだったから、アメリカが彼女のホームだとは円香は少しも思っていなかった。

「彼女のご両親は日本の方だから、家では日本語も使っていたそうだ。だから、日本語も英語もどちらも問題なく使えるんだよ」
「そっか、バイリンガルなんですね。かっこいいですね」
「そうだな……」

 彰史は円香に同意するも、なぜかそのまま黙り込む。そして、すぐに円香へ強く真っ直ぐな視線を向けてくる。

 それまでとは明らかに空気が変わって、ここからが本題なのだと円香は悟る。
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