妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「びっくりよね。そんな理由で諦められるわけないじゃない? 私、彰史がどれだけ頑張ってきたか、知ってるのよ。きっとあなたよりもよくわかってる」
「……」
「ねえ、あなたは知ってる? 私と彰史の関係」
「……はい。以前、交際されていたと」
「そうね。そうなんだけど、その関係性はまったく重要じゃないわ。重要なのは私たちが同じ会社の同僚だったってこと。同じ年に入社した仲間で、ライバルだったの」

 円香はなぜだか、交際していたと聞かされたときよりもショックを受ける。円香では決して踏み込めない領域に、この相川は入っていたのだと、自分との差を見せつけられたような気になる。

 相川に、知らなかったのかと問われ、円香はすっかり落ち込んで、小さく「はい」と答えた。

 すると相川はさらに補足するように、二人のことを語りはじめる。

「二人とも新卒で入った会社なんだけどね、私は海外で活躍するため、彰史は起業するために、踏み台としてその会社に入ったの。お互いに明確な目標があったからか、私たちはすぐに意気投合して、二人で励まし合いながら頑張ってきたわ。お互いの夢のために」

 あの日、彰史が語ってくれたことを円香は思いだす。彰史が、母親の想いに報いようと頑張っていたその頃に、二人は出会ったというわけだ。

 彰史のことを語る相川の目は真剣そのもので、本当に彰史を思って口にしているのだとわかる。

「私、すぐそばで彰史のことを見てきたから、彼がやりたいことも、どれだけの努力をしてきたかもよくわかってる。今回の話は絶対に断るべきじゃないの」

 円香に彰史の仕事のことはよくわからないが、これほどの大企業からのオファーを断るべきでないだろうというのは、円香にも理解できる。

 そうですね、と同意の言葉を返すべきなのだろうが、それは簡単にできるものではなくて、円香は何も言葉を返すことができない。

 黙って俯く円香に、相川は心なしか柔らかくした声音で語りかけてくる。
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