妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「彰史、優しいでしょ」
「え……」

 円香は反射的に顔を上げる。だって、彰史を優しいと評すのは、本当に彼のことをよくわかっている人間だけだ。そんな人の言葉を無視なんてできない。円香は自然と彼女の言葉に耳を傾けてしまう。

「彰史は本当に優しいから、あなたがいると頷けないのよ。政略結婚だったとしても、彼は結婚相手のあなたを決して蔑ろにはしないでしょ? 彰史はそういう人よ。きっとあなたの立場や世間体なんかを考えて、自分から離婚を選ぶことはしないと思う。あなたが彼の足枷になってるの」
「足枷……」

 その言葉が円香に重苦しくのしかかる。相川の言うことは正論だ。

 円香たちは元々利害が一致して結婚に至ったのだ。彰史は資産運用の実力をつけるため、円香は新しい環境に身を置くため、そんな理由で結婚している。

 きっと彰史にとって今でも円香との婚姻関係はメリットを与えるものではあるだろうが、より大きなメリットのある話を前にすれば、その関係はもはや彼を縛り付けているものでしかない。デメリットのほうが大きいかもしれない。

 わかりたくなかったその事実に円香は打ちのめされる。もう十分すぎるほど自分の立場を理解させられたが、相川はさらに円香に追い打ちをかける。

「私たちは彰史が絶対に必要だし、彰史も私たちの力は絶対に必要なの。でも、あなたの婿は彰史じゃなくてもいいでしょ? 恋愛結婚じゃないなら、別の相手だって構わない。違う?」
「それは……」

 円香は上手く答えられない。相川は両者に政略的な結びつきが強くあると思っているようだが、実際はそうではない。円香は別に婿を取る必要はないのだ。円香が今渋っているのは、彰史を好いているからにほかならない。

 でも、それは円香の一方的なものだから、円香が彰史を縛り付けているという真実がより一層浮き彫りになってしまう。円香は何も答えられない。
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