妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
「もうびっくりよ。全然考えてくれてないんだもの。しかも、その次の日には、恐ろしい顔をした彰史がうちに乗り込んで来たのよ。円香さんを巻き込むなら容赦しないって言ってね」

 円香はぎょっとして彰史を見る。しかし、彰史は当たり前だとでも言わんばかりの表情をしていて、それがさらに円香を驚かせる。

 彰史が家族思いであることはよくわかっているが、乗り込むだなんて、いくら何でも度を越してはいないだろうか。

 本当にそんなことがあったのだろうかと、再び相川に視線を戻せば、相川は肩をすくめて、やれやれといった表情で軽く首を振っている。

「彰史のことを知っている私でさえ凍り付いてしまいそうなくらい冷ややかな顔をしているんだもの。このまま殺されるんじゃないかと思ったわよ」
「俺は合法なことしかしない」
「それ、逆に言えば、合法なら何でもするってことじゃない。かえって恐ろしいわよ。実際、私たちを脅して、こっちが条件を飲まざるを得ないように仕向けたでしょ?」

 恐ろしい会話をする二人を円香は交互に見つめる。いったい、裏でどんなやり取りをしていたのだろうか。まったく想像がつかないが、相川の言い方からして、彰史がうわてであったことは間違いないだろう。

「はっ、ただの交渉だろ? 自分のカードを上手く使っただけだ。責められるいわれはない」
「そのカードが恐ろしいのよ。昔から、目的のためには手段を選ばないんだから」
「手段を選ばなかったのはそっちだろ? 探偵まで使いやがって」

 探偵のワードに円香は驚く。あまりにも現実離れした会話に円香はついていけない。まるで映画のワンシーンでも観ているかのようだ。

 円香がポカンとして二人のやりとりを見守る中、相川と彰史は言い争うように会話を続けている。

「それはただの情報収集よ。上手く動くためには必要でしょ?」
「否定はしないが、やり過ぎだ。家族のことまで調べる必要はないだろ?」
「アメリカに呼ぶんだもの。今回は必要だったのよ。まあ、肝心な情報は抜け落ちていたんだけどね。愛のない政略結婚って話だったのに、これじゃあ上手くいくわけないわ」
「一つの情報を妄信するからそうなるんだ。結局、無駄に俺らをかき回しただけだろうが」
「それは……その通りね。弁解のしようもないわ」

 そこで二人の会話はいったんの落ち着きを見せ、互いにため息をついている。

 円香はというと、耳を疑いたくなるような話を聞かされて、怯えに近い感情を抱いている。深く考えるとより怖くなりそうで、円香はほとんど思考を停止させて、呆然と二人を見つめている。
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